重曹がウドンコ病に効く?!〔後編〕
[注意]
この記事は、理化学研究所に事前に転載申請をし、許可を受けたうえで書いています。二次転載を固く禁じます。
[追記] 2012/9/8 記事中に農林水産省の資料を追加。
前編をお読みになっていない方は、ぜひ前編からご覧くださいね。
■重曹は薬害が出るものだった
私の疑問を要約すると、
・重曹がなぜウドンコ病に効くのか
・重曹水はなぜ薬害が出るのか
ということです。
素人の私でも理解できるように、明快に答えてくれる記述をようやく見つけることができました。
「ミカンから抽出した苦み成分の抗菌効果を調べるために、重曹を混ぜて溶かしました。すると苦み成分の方ではなく、重曹に高い抗菌効果があることが分かりました。これが今の研究につながる最初のきっかけです」
有本 裕「安全な農薬で食糧問題に貢献する」『理研ニュース』April 2006(No.298) より引用
出典は以下同じ。
重曹には抗菌効果があったんですね!
しかも、その発見から、薬が開発されていたのです。
有本研究ユニットリーダーらは重曹を主成分にした薬剤を開発し、1982年に農薬登録の認可を得た。しかし、ここからが苦難の始まりだった。この農薬は、果樹や野菜の主要な病気である、うどんこ病の防除に高い効果を示したが、薬害も発生してしまったのだ。「乾燥した温室で作物に散布すると、水分が蒸発して重曹の結晶ができます。その結晶が夜露(よつゆ)に溶けて大変濃い溶液となり、作物に被害を与えたのです」
有本 裕「安全な農薬で食糧問題に貢献する」『理研ニュース』April 2006(No.298) より引用
そう。葉に残る白い粉は重曹水が結晶化したもので、見栄えが悪いだけでなく、薬害の原因にもなっていたのです。
原因がわかって、スッキリしました。
では、この結晶をどうすればいいのか。
有本氏らは、結晶化を抑えて薬害を防ぐ研究をしたのです。
結晶化を抑えて薬害を防ごうと、重曹や重カリに、500~600種類の薬品と混ぜる実験を繰り返したものの、そう簡単には解決策が見つからなかったそうです。
重カリ(炭酸水素カリウム)は重曹(炭酸水素ナトリウム)と似た性質のもので、同じ防除効果があるとか。重カリは欧米では食品添加物として使われ、日本でも、医薬品や肥料などに使われているそうです。重カリも、重曹同様口に入れられる物なのです。
研究チームが4年の年月をかけて試行錯誤したことを、ド素人の私が簡単に「なぜ?」「どうすればいい?」なんて考えても、そう簡単に答えが出るものではなかったんです。
浅はかだったなと思うと同時に、研究者と素人が同じ問題点にたどり着いたことが面白くもありました。
その薬害を防ぐ技術がどういうものであったかについては、ぜひ引用元のページをお読みください。
■食用の材料から開発された薬



この農薬は、肥料としても働き、植物の耐病性を高め、治療効果もあるそうです。
カリグリーン

カリグリーン

「カリグリーンの発売後、素晴らしい効果を持つ2種類の化学農薬が発売されましたが、どちらも数年で耐性菌が出現して効かなくなりました。1993年にカリグリーンが発売されてから約13年になりますが、耐性問題は報告されていません」
有本 裕「安全な農薬で食糧問題に貢献する」『理研ニュース』April 2006(No.298) より引用
耐性がつかないのは、ありがたいですね。
食品や食品添加物として長年使われてきたものを防除に用いるというコンセプトをSaFE(セーフ)(Safe and Friendly to Environment)と名付け、新しい農薬の開発が進められており、その成果の一つがカリグリーン

このSaFEという考え方は、小さな空間で小さなガーデニングをしている私にとって、受け入れやすい考え方です。私が「砂糖水」や「重曹水」を試してみた理由は、口に入れられる材料だという点にあったのですから。
そういう発想で作られている薬剤もあったのですね。
この記事を読むと、短絡的にすべての農薬が危険であると決め付ける必要がないと思えてきます。
むしろ素人判断で希釈した水溶液は、成分が不安定です。特に私の場合は水溶液を作る量が少ないだけに、希釈濃度も作るたびに均一にはならないでしょうし、攪拌も十分でないでしょう。粒子レベルで判断していませんし。
堆肥作りに関しても、同様の指摘がありますね。
手軽さと不確かさを天秤に掛けてどちらを取るかは、その人次第でいいと思います。
これを読んだあなたが、「それでも薬剤を混ぜている物だから、農薬は一切お断り」という結論でも、「安くて手軽なのが一番だから、自分で重曹水を作るよ」という結論でも、一向に構いません。
■私の判断
私なりの結論としては…
・重曹水はウドンコ病に効果があるが、薬害も出る
・自家製重曹水は、希釈液の濃度を一定に保つのが困難
・重曹水散布後の結晶は薬害の元になるので、洗い流す必要がある
・薬害を避け、安定した効果を得るには、「カリグリーン」を使ってみよう
私は、ウドンコ病が広範囲に発生したときには(といっても、たかだか小さな鉢が10鉢程度ですけど^^)、カリグリーン

ミニバラで見栄えが悪くなるのは、ご勘弁。黒く変色した葉は、見ていて悲しいですし、黒点病を思い起こさせギョッとしてしまいます。小さな異変も、株全体が小さいから目立つのです。果菜の葉だったら、あるいはバラはバラでも大きなバラだったら、多少黒くなっても気にしないかもしれないとは思うんですけどね。
実は、今回の実験で、ミストラルの蕾を1個ダメにしちゃいました。蕾にはかけていないつもりだったのですが…。真っ黒に変色してしまった蕾を見て、こんなギャンブルは止めたほうがいいんじゃないかなと思ったのでした。なにせ、ウドンコ病の被害に真っ先に合うのは、柔らかい新芽と蕾の茎です。そこに使えないのでは、常用できませんからね。
※ 追記 ※
畑人さんからのコメントにあった農林水産省の資料を参考までに追加します。重曹が「カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン、ナス、ピーマン、イチゴ、トマト、バラのうどんこ病」に効くと記されています。
------------------- 引用ここから ----------------------
特定防除資材(特定農薬)として指定された資材に関連する情報提供について
特定防除資材は、原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に対し害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして指定されたものですが、たとえ食品であっても大量に摂取したり目に入れたり、環境中に散布しても全く問題がないわけではありませんし、全ての特定防除資材があらゆる濃度や使用量であらゆる病害虫に使用して効果があるわけではありません。
このため、以下のとおり、特定防除資材を使用する方などのために、資材ごとに、殺虫、殺菌等の効果が確認された使用方法などの情報を提供します(天敵などは除く)。使用の際の参考としてご覧下さい。
現在、特定防除資材として指定されている以下の資材については、農薬登録が過去にあったか、現にあるものであり、その使用方法を記述しています。ただし「同様の有効成分を持つ登録農薬」で薬効が認められたものであっても、特定防除資材では登録農薬と同様の薬効が確認されたわけではないことにご注意下さい。
なお、安全性の高い特定防除資材であっても目や口に入らないよう注意が必要であることはいうまでもありません。
品 名 | 種類 | 薬効が認められる 対象病害虫 | 参考となる使用方法 |
重 曹 | 殺菌剤 (散布用) | ・イチゴ、トマト、バラの灰色かび病 ・カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン、ナス、ピーマン、イチゴ、トマト、バラのうどんこ病 | ・重曹濃度0.1%程度に薄めたものを10アール当たり100~500リットル散布。 (登録のある炭酸水素ナトリウム剤の使用方法を参考に記載) |
食 酢 | 殺菌剤 (種子消毒用) | ・イネの もみ枯細菌病 ばか苗病 ごま葉枯病 (酢酸液剤として薬効を確認) | ・酢酸濃度0.1~0.25%のものに24時間もみを浸漬。 (過去に登録のあった酢酸液剤の使用方法を参考に記載) |
【問い合わせ先】
消費・安全局農産安全管理課農薬対策室
ダイヤルイン:03-3501-3965
------------------- 引用ここまで ----------------------
そしてもう一つ畑人さんからいただいた重要な指摘。
希釈倍率 1,000倍。
濃すぎると害になりますから、希釈倍率はきっちり守っていきましょう。
[参考にした記事]
[参考リンク]
[関連記事]
- 重曹がウドンコ病に効く?!〔前編〕(2007/4/9)
- 新手のウドンコ病対策(2005/11/30)
アルコール除菌ティッシュでウドンコ菌を拭き取る方法を閃いちゃったのです。 - 海の向こうのウドンコ病対策(2012/1/28)
重曹スプレーのレシピを載せました。
この記事へのコメント
「『安全性が高い』のは逆に効かないのでは?」と
結局別のを買ってたアレですか..!
いやー、みくびってました!!
今度はバカにせずに試してみよっ!
「安全性が高い=効果が薄い」と思いがちですよねー。
私もそんな感じでした。
でも本当はカリグリーンの事までコメントしようと思ったけどやめたんだよ。やっぱりカリグリーンに行っちゃうよね、最終的に肥料になるんだから安全この上ないと思ってる。
前にきゅうりに使ったけどそこそこ効果があったと思う、ただ一箱に入ってる量がすくないので使わなくなったような記憶です。
今年はうどん粉で撤去する頃には次の若い株が収穫できるようなローテーションできゅうりを育てようかなと目論んでいます。
うどん粉もそうだけどアブラムシも悩みの種です。試行錯誤が続きますね。
そりゃあ、もう、NAOさんはいっぱい経験と知識を備えた「野菜のお兄さん」ですから、私の考えたことなんてお見通しだったでしょう(笑)。
初めの頃はウドンコひとつにきりきり舞いでしたけど、今では試行錯誤が全然苦になりません。あくなき戦いといいますか、試行錯誤が続いていくものですよね。
アブラムシもそうですね、ホント。大した被害じゃないようでいて、放置しておくと病気にまで発展してしまうんですものね。
あそこまで群生する生き物っていうのも、驚きます。アブラムシには淘汰ってないんですかねー。
私も今からうどん粉病には戦々恐々としているので、是非参考にさせて頂きます。
納豆菌とか乳酸菌が効く、という話もききましたが、なかなかそううまい話はないんでしょうかねぇ・・・。
菌にもいろいろありますからねー。
自分に都合の良い菌だけを殖やすのも、なかなか難しいかもしれませんね。細菌の生態についても知る必要があるでしょうし。
広いお庭だったら、米ぬかを発酵させてもいいんでしょうけど、うちみたいにベランダのニオイが即室内に流れ込む環境ではちょっと…。
私の姉が、フロックスの種を買ったのですが…
フロックスはウドンコ病にかかりやすいと…。
やっぱり都合のいいものばかりはありませんね。
重層どうしましょう…薬害が心配です。
この梅雨時は、ウドンコ病発生時期ですね。
フロクッスを育てたことがないので何とも言えませんが、本文中で書いているように、重曹と同じ効果でしかも安定しているのはカリグリーンですので、薬害が心配でしたらカリグリーンを使ってみてはいかがですか。
乾燥が原因の場合、シリンジでも防ぐ効果があります。まずはウドンコ病にかからないようにくふうしてみてくださいね。
重曹の話を見てコメントさせていただきました☆☆
実は私も今日知らずにうどん粉予防に重曹をかけてしまい、葉っぱなど蕾などが黒くなって慌てて色々検索しました(;_;)
質問なのですが、葉っぱが少し黒いのも切った方がいいのでしょうか??
あと、蕾の横の葉っぱが黒く蕾自体は黒くなかったら別に切らなくても大丈夫ですか?心配で…(>_<)
初めまして&ようこそ♪
私はただの素人なので、最善の答えがわからなくて、しはらく悩んでしまいました。これから私が書くことは、「そういう考え方もあるんだな」くらいに受け取ってもらえたら、ちょうどいいと思います。
まず、黒くなった葉や蕾を切るべきか。
黒くなったものは元に戻りませんから、バラのような観賞用の花の蕾であれば、私は切ります。果菜であれば、ケースバイケースです。
重曹水散布後に葉などが黒く変色するのは、一種のヤケドのようなものだろう、と私は考えています。病気ではないので、広がりません。(黒点病の黒いシミは感染する病気なので拡大します)
葉の一部が薬害で黒くなろうと、光合成に必要な葉であることに変わりありません。だから、あまりたくさんの葉をむしり取ると、植物にもっと大きなダメージを与えてしまいます。
黒いのが気になるのは美観の問題、つまりあなたの主観の問題。だから、あなたの判断次第です。と言ったら、困っちゃうかな? 私だったら、あまりにひどい葉は取るけれど、他は光合成のために残します。そして、夏になって葉が茂り過ぎた頃に、整理を兼ねて取り除きます。
葉が十分にあるかどうかは、毎日観察していると判断できるようになります。ぜひこの機会に、井上さんも植物の観察力を磨いてくださいね。
それと、予防と治療は違います。使う薬剤や資材が違うことが多いので、気を付けて。
すごく安心しました!!
私は観賞用などと違い普通の寄せ植えなのでそのままにしておきます(*^_^*)
初心者なので全くわからずに毎日ハラハラしています(>_<)
でも、花を育てるのって、すごく奥深いですね☆
もっと勉強したいです☆
わからないことばかりなので、またブログ拝見させていただきます(*^_^*)
ありがとうございました☆☆☆
状況を見ていない私が言ってることを鵜呑みにするのは危険かもしれない、ってことをお忘れなく。
観賞用の花と食用の花のことを分けて書いたつもりだったのですが、違うように伝わってしまったみたいですね。
誰でも最初は初心者。いっぱい経験を積んで、ガーデニングを楽しんでくださたさいね。
わがやのトマトがうどんこ病にみまわれており、たいへん参考になりました!
バラもとっても綺麗ですね。
虫が苦手な私でも育てられるかしんぱいですがチャレンジしてみたいです!
重曹、酢、カリグリーンいろいろ試してみます。
貴重な情報ありがとうございました
こんにちは♪
コメントありがとうございます。^^
参考になったようで嬉しいです。
機会があったら、バラもぜひ育ててみてくださいね!
考え方は人それぞれだけど、私は果菜のほうが手間がかかると思ってます。
バラは咲いたらひとまず目標達成。
でも、トマトは花が咲いてからがまた長い(笑)。実がなるかどうか、ついた実がおいしいかどうか、収穫まで気になることがいろいろありますからね。
手間がかかっても育てるのは楽しいから、困っちゃいますね。^^
あまり農薬は使いたくないですよね。
今まではうどんこ病にやられた葉っぱを取ったり拭いたりで、毎日格闘してましたよ。
酢や重曹を使ったり、カリグリーンを使う手法もあるんですね。
私はベランダが広いので、薔薇をはじめ、洋蘭や多肉、サボテン、草花、野菜など趣味で色々栽培してます。
うどんこ病は薔薇やマメ類に出て困ってました。
参考にさせていただきますね。
アブラムシやカイガラムシ、アオムシ…
考えたらきりがないんですが、虫なんて見るのも嫌で、蚊さえ殺せなかった私が、今では普通にカメムシを踏んづけたりしてます(笑)
また遊びにきます。
以前ミニバラの掲示板(今はない)で、高濃度の砂糖水が効くという話題で盛り上がったことがあります。確かに、一時は効果があったんですけど。一方で、とある本には、砂糖水が効くなんて聞いたことがないと書かれていて、効果の是非は不明のままに。
そうしたら、商品として出てきましたね! ベニカマイルドスプレー。まだ使ったことはありませんが、気になります。自分で砂糖水を作るより成分が安定しているはずですしね。
そんなこんなで、私も自分にとってより良い方法はなんだろうと、試行錯誤が続いてます。
「海の向こうのウドンコ病対策」という記事にも書いたんですが、うちでは以前よりウドンコ病がひどくならなくなっているのは、環境にも気を付けることができるようになったからかな? ホームセンターでウドンコ病大発生を見ると、「ここは風通しが少なすぎ。過湿」なんて気が付けるようになりました。
私も虫は大嫌い。でも、少しずつたくましくなっていくものですよね。ぶちっといける虫も増えました(笑)。病害虫に対してたくましくならざるを得ない、逃げられないと言いますか。^^
またぜひ遊びに来てくださいね!(*^ω^*)ノ彡
とても詳しく書かれており、楽しく勉強させていただきました!
うちもプランターでトマトなどを育ててるのですが、木酢?を1000倍くらいに薄めて散布したとこ、葉がしなだれて元気がなくなってしまいました(´・_・`)ナンデダー。。。
そこで、何なら良いのか調べたら重曹が…まったく思いつきませんでした。
重曹なら口に入れてもいい物なので安心して使えますねo(^▽^)o
ここを参考に野菜達のお世話頑張ります!ありがとうございました(⌒▽⌒)
こんばんは。夏野菜を育てるのが楽しい時期ですね。^^
重曹水のレシピは「海の向こうのウドンコ病対策」(2012年01月28日)という記事に書きましたので、参考にしてみてください。
ただ、記事中で書いていますが、重曹水の場合、葉が黒く変色する恐れがあります。特に、新芽に重曹水が掛かったら、その新芽はダメになるかもしれません。木酢・竹酢も使い方次第だと思いますし、重曹も使い方次第だと思います。
うめぼちさんに合ったウドンコ病対策が見つかりますように。
初めまして♪ ミニバラデビューされたんですね!
初めての栽培なのに弱っている株だったのでは、いろいろ手が掛かったでしょう?
初めのうちはミニバラは弱いし、栽培する側も不慣れだし、バラ栽培の本をぜひ手元に1冊置いて、繰り返し読むことをお勧めします。無農薬栽培はある程度慣れてからのほうがいいんじゃないかなーって個人的には思います。
ミニバラは時に病気にはなるけど、木ですから結構タフな面もあるので、慌てず楽しんで栽培してくださいね!
農林水産省の資料は、さっそく記事中に追記しました。
希釈倍率もとても大事なことですね。
お仕事で薬品を使っていらっしゃる方には常識であることも、末端のユーザーにはよくわからないことだらけかもしれません。今さらながら、農林水産省のHPは一番最初に調べるべきだったと反省しています。
有益な情報をありがとうございました。