8月15日だったから

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知人が「すごく面白いから♪」と、『夏のあらし』という漫画を貸してくれました。

面白いというのは「がはははっ!」と笑えるおかしさではなく、しみじみと考えさせられる力作ということなんです。

表紙は学園ラブコメみたいにもみえますが、根幹は戦争を題材にした物語。戦時中に女学生だった「あらしさん」が幽体のまま現代にあり続け、現代人のパートナーと共に過去にタイムトリップするお話です。

焼夷弾について、当時の空襲の体験談を聞いたことはあったけれど、構造を図解したものはこの漫画で初めて見ました。目的を効果的に達成する、よくできたモノだってことが理解できました。私が以前聞いたことがあるのは、「人はロウソクのように燃える」という話でした。この漫画では、目や喉がいとも簡単に燃えると表現されています。同じことだと思います。

戦争では、その人がどんな生き方をし、どんな気持ちでいたかなんておかまいなしに、物体としての体が一緒くたに破壊されていくのだという考えが、心に響きました。

7巻は、神奈川の大空襲の日へタイムトリップ。空襲を止めることはできないけれど、戦禍が町も人も飲み込んでいくなか、どうしても助けなくてはいけない人を探しに出る…というところで終わり。

7巻までしか借りてないのです。お願いだから、私に早く8巻を貸してください…。(>人<;)



8月15日を迎えたし、こんな作品を読んだこともあって、祖母のことを思い出しました。

祖母は朝夕仏壇に参る人でしたが、8月15日だけは朝から泣きながら手を合わせていたものです。

祖母には末の弟がいました。年が離れていたこともあって、溺愛していたようです。しかし、赤紙に召集され、帰らぬ人となってしまいました。祖母はその弟の早すぎる死を思い、毎年8月15日は涙が止まらないのでした。

泣き続ける祖母に、まだ小さかった私は「今も悲しい?」と聞きました。

「悲しいよ。悲しさはね、何年経っても消えないんだよ。きょうだいの中で一番優しい子だったのに…あんないい子が命を落とさなければいけないなんて…嫁さんももらわずに逝ってしまった…まだ若かった…人生をもっと生きるはずだったのに……」

「ばーちゃんは、今もアメリカが憎い?」

「それは違うよ。恨んじゃいないし、恨んではいけない。虫も殺せぬ優しい子だったけど、戦争だからね、人をあやめたろう。あの優しい子がどんなに苦しい思いでやっただろうと思うと、胸が痛くて仕方がない。でもね、あの子のしたことで、アメリカで泣いている人もいるはずなんだ。ばーちゃんが泣いているように、アメリカでもおっかさんが泣いているんだよ。どっちの国でも、悲しくて泣いているんだよ」

当時の私にとっては、予想外の回答でした。

祖母はやがて今で言う認知症になって、8月15日に泣かなくなりました。祖母の認知症は少し不思議な所がありました。新しい記憶を少しは作ることができたり、自分の願望が記憶として改ざんされることがありました。

いつだったか、お盆休みのときに、不思議なことを言い出しました。

「あの子から連絡があったよ。今はまだ赤ん坊の首が座っていないから、もう少し大きくなったら、嫁さんと3人で来てくれるって。優しい子だからね、いいパパになるよ、きっと。あんな子だから、いい嫁さんにも娘にも恵まれた。あの子には、息子より娘だね。神様もよーくわかってるねー。あー、早く会いたいねー」

祖母の頭の中では、弟には娘が生まれていて、姉さんに会わせたいと電話が掛かってきたことになっていました。それはもう嬉しそうに話してくれました。

現実的には過去を変えることはできないけれど、こうして自分の望むものと悲しい過去を入れ替えることができて、悲しみから解放されるのであれば、病気は祖母にとって意味があったのかもしれません。

まだ子供だった私にはぽかーんと見守ることしかできなかったけど、今の私ならもっと上手に相槌を打てただろうにね。残念だけど、私にはタイムトリップができないから、今からではどうにもできないけれど。

こんなことを思い出すのも、8月15日が来たからですね。





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