国バラ2015 (5) バリアフリー事情

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今回は、ツレが杖歩行でした。だから、車椅子のお客さんたちと一緒に、いつもとは違う入り口から入場しました。そんな立場から見えた情景を書いておこうと思います。

* * *


チケットを購入して、もぎりのところを通り、通常は右手の坂道を上がっていきます。今回は、もぎりのおにーさんが「あっちから入れるんで」と笑顔で言ってくれました。

「あっちって、どっち?」

「左です」

「左手に入り口があるのね?」

「赤いシャツのスタッフがいるんで」

左手を見るとスタッフがいました。赤いシャツではないよ?と思って近づいてみたら、赤いシャツの人もいました。シャツの色に役割とか意味があったのかな? わからずじまいですけど。

入り口と思しき場所の右手のデスクに、赤いシャツのおねーさんがいました。でも、杖をじろっと見ただけで、視線を落とし自分の仕事に戻ってしまいました。

「車椅子でもご入場できまーす」とアナウンスしていた男女2人のスタッフに、「ゲートでこちらから入れると言われたのですが」と話しかけると、杖を見て一瞬無言になりました。まあ、車椅子ではないけど…ダメなの?という気持ちで見ていると、「どうぞ」と言われて通ることが出来ました。基準が明確にないんでしょうかね。

そして、パンフレットをおもむろに胸元に押し付けられましたが…。杖の人はバランスが悪いので、いきなり受け取れないのです。慌てて私が2人分受け取りました。

建物に1歩入った途端に、床に敷いてあるパネルがガタッと結構大きく動きました。1枚だけではなく、何枚も。

「段差ありすぎ。足場悪すぎ。バリアフリーとは言えないな、これ」

しょっぱなから苦言が出ました(笑)。その通りだから、苦笑するしかありません。

車椅子の老夫婦には入り口まで誘導し、「段差があるんで気をつけてください」と笑顔で話しかけていましたが、こっちは勝手に入ってね風の扱いだったのもカチンと来たのかな。

* * *


私たちがお弁当を買ったときに、入り口で一緒だった車椅子の老夫婦もまた一緒になりました。

国バラの会場は、観客席以外は飲食禁止なのですよ。車椅子の方はどうするのかと見ていたら、会場のスタッフに相談されていました。その会話が耳に入ってきたのですが…

「階段より下は飲食禁止なんで、階段の上の客席に行ってください。あー、車椅子? 登れないっすか? ムリっすか? ですよねー。でも、禁止なんですよー。まいったなー。んー、えぇー、じゃあ、この辺で邪魔にならないようささっと食べてもらってもいいですか」

そんな、何重にも失礼な発言をしたので、第三者の私がクラクラしてしまいました。

まず、車椅子のお客さんの食事場所は想定しておきなさい。これは主催者側のミス。せめて、半券で再入場できるようにすれば、こんな問題は解消します。

スタッフのおにーさんがこの辺って指をさしたところは、大きなゴミ箱の横。邪魔にならないよう、ゴミ箱の陰に隠れてさっさと食えとは。人をごみ同然に扱うとは何事ですか。邪魔って何ですか。だったら、動線を別途作りなさい。

車椅子のご主人もさすがに腹を立て、こんなところで食えるか、メシはいらんと言われてしまいました。

面倒だな、開放してくれよ、という気持ちがおにーさんの顔にも態度にも表れていて、本当にダメだなとワナワナしてきました。

こちらもこちらとて、お弁当を食べなくてはなりません。「あんなの見てると腹が立つだけだから、行こう。階段? 上るしかないでしょ、あれ見たら」とツレに促され、観客席に上りました。

この階段がくせものでね。水平が取られていない。つまり、地面に対して水平ではなく斜めになっている。しかも、1段1段の高さがまちまち。表面がきちんとならされていないから、凸凹している。こんな欠陥階段は、ここでしか見たことありません。

不思議なもので、上りは、こんな階段でも違和感を感じつつ上れるのですのが、問題は下りるとき。めまいを起こしたのかと勘違いするほど、頭がくらくらするのです。ツレの体幹が大きく歪んで杖にぐっと体重をかけた時、ものすごく冷やっとしました。転ばなくて本当によかった。

* * *


車椅子のお客さんは、私がいる間に10組くらいは見たと思います。毎年、一定数見かけます。みなさん、どうやって過ごされるのでしょうね。

食事とトイレが必要ない短時間滞在なら、不自由は少なくできるけれど…。一周するにも時間が掛かりますからね。

私なら、車椅子の人は連れて行かない。あそこには、ハードとソフトの両方においてバリアフリーは存在しない。それが私の結論。

この記事へのコメント

加藤
2015年07月30日 12:25
なるほど。
西武球場建設当時にバリアフリーなんて考えはありませんでしたね。
でも、ソフト面はもちろんのこと、野球場を改築しなくてもできる工夫はいくらでもあるはずです。
バリアフリーに限らずですが、「思い至らない」というのもひとつの罪になるものだと思います。
それにしてもあの階段、よくぞここまで歩きにくくしたものだと、いつも感心していました。
もも@管理人
2015年07月30日 14:06
◆加藤さん
建物に関しては、バリアフリー以前の問題ですね。無論、今の基準ではやり直しですよ。それに、加藤さんの書かれたように、改築せずとも工夫することは可能なわけで、何もしていないことにモヤモヤーッとするんでしょうね。
接客対応に関しては、にわかスタッフに過度な期待をしてはいけないと承知しているものの、いろんなことを思ってしまったのです。
西武なんてあんなもん、バイトなんてあんなもん、と言われたら、納得せざるを得ないんですけどねぇ。「思い至る」には、相当の訓練と経験、もとより人としての資質が必要なんでしょうねー。

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